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公開:2026年9月11日/最終更新:2026年10月18日

キックの後に脚の付け根が痛む|股関節と鼠径部の痛みの研究

キックの練習を終え、階段で脚を持ち上げたときに付け根がうずくと、さっきまで蹴れていたこととの違いに戸惑います。太ももの内側なのか、もっと奥なのか、痛む場所をうまく言葉にできないこともあります。筋肉の疲れとして待ってよいのか、股関節の問題として練習を変えるべきなのかが気になるところです。脚の付け根の痛みは内転筋だけでなく股関節などにも関係し、複数が重なるため、痛みの分類を確かめてから続け方を決めることが大切です。

この記事の要点
  • 鼠径部痛には内転筋、腸腰筋、鼠径管、恥骨、股関節に関係するものと、その他の原因があります。
  • Taylor(2018)の専門外来の調査では、内転筋に関係する痛みが61%、複数の原因が重なる例が44%でした。
  • Mack(2022)の空手の調査では、回答者の30.0%が競技を続ける間に股関節の痛みを経験していました。
  • 内転筋の運動で問題が減った予防試験と、すでにある痛みに対する治療研究は分けて判断します。
  • 筋力が伸びた結果とけがが減った結果の違いが、運動を選ぶ際の重要な比較点です。

キックの後に脚の付け根が痛む|股関節と鼠径部の痛みの研究

キックの練習を終え、階段で脚を持ち上げたときに付け根がうずくと、さっきまで蹴れていたこととの違いに戸惑います。太ももの内側なのか、もっと奥なのか、痛む場所をうまく言葉にできないこともあります。筋肉の疲れとして待ってよいのか、股関節の問題として練習を変えるべきなのかが気になるところです。脚の付け根の痛みは内転筋だけでなく股関節などにも関係し、複数が重なるため、痛みの分類を確かめてから続け方を決めることが大切です。

脚の付け根は鼠径部と呼ばれ、近くには筋肉、骨、関節などが集まっています。Weir(2015)のドーハ合意は、競技者の痛みを問診と診察で整理するための共通の言葉を示しました。一方、内転筋を鍛えて鼠径部の問題が減ったHarøy(2019)の試験は、男性サッカー選手の予防を扱っています。ボクササイズで痛みが出たときには、この「何が痛みに関係するか」と「問題を減らす運動があるか」を分けて読むと、筋力不足と早合点せずに次の対応を考えられます。

要点

  • 鼠径部痛には内転筋、腸腰筋、鼠径管、恥骨、股関節に関係するものと、その他の原因があります。
  • Taylor(2018)の専門外来の調査では、内転筋に関係する痛みが61%、複数の原因が重なる例が44%でした。
  • Mack(2022)の空手の調査では、回答者の30.0%が競技を続ける間に股関節の痛みを経験していました。
  • 内転筋の運動で問題が減った予防試験と、すでにある痛みに対する治療研究は分けて判断します。
  • 筋力が伸びた結果とけがが減った結果の違いが、運動を選ぶ際の重要な比較点です。

脚の付け根を「股関節」と一括りにしない

付け根が痛いという感覚だけでは、痛みに関係する組織の名前まで定まりません。Weir(2015)のドーハ合意は、症状の経過を聞く問診と、体の反応を見る診察をもとに、競技者の鼠径部痛を分類します。画像に写る異常の名前を先に当てはめるのではなく、本人が感じている痛みと診察の所見を結びつける考え方です。「股関節が硬いから痛い」とまとめるより、どの領域の問題として評価するかを整理する役割があります。

この合意では、筋肉などの領域に関係する痛み、股関節に関係する痛み、その他の原因を分けています。下の表はWeir(2015)の分類を、体の場所が伝わるように並べたものです。表の名前は診断を自分で選ぶためではなく、診察で出てきた説明を理解するための手掛かりになります。

分類 体のどこに関係するか 分類を読むときの要点
内転筋に関係する痛み 太ももの内側にあり、脚を内側へ寄せる筋肉 筋肉の働きと痛みの関係を診察で整理する領域です
腸腰筋に関係する痛み 腰や骨盤から太ももにつながり、脚を持ち上げる筋肉 内転筋に関係する痛みとは分けて扱います
鼠径管に関係する痛み 下腹部と脚の付け根の境にある通路状の部分 股関節そのものとは別の領域です
恥骨に関係する痛み 骨盤の前側の中央にある骨の周辺 骨盤の前側も評価に含めます
股関節に関係する痛み 骨盤と太ももの骨がつながる関節 関節に関係する問題として評価します
その他の原因 上の分類以外の原因 筋肉や関節以外も含めて診察で検討します

内転筋の痛みが多くても、原因は重なります

「蹴った後だから内ももを使いすぎた」と考えるのは自然ですが、研究では別の領域との重なりも目立ちます。Taylor(2018)は、鼠径部痛の専門外来を受診した競技者をドーハ合意で整理し、内転筋に関係する痛みが61%と最も多かったと報告しました。同じ集団の44%では、複数の原因が認められています。内転筋に関係すると説明された場合も、それだけで付け根の痛み全体を説明し終えたとは扱わないことが、この研究の読みどころです。

対象の構成を見ると、Taylor(2018)の調査では98%が男性で、60%がサッカー選手でした。主に蹴る動作や方向転換を行う競技の選手が、痛みのために専門外来を訪れた集団です。調べた割合の分母は、元気に練習している人も含めた競技者全体ではなく、すでに症状があり受診した人たちです。この違いを押さえると、「蹴る人は内転筋を傷めやすい」という大まかな印象よりも、受診後の評価で何を見落とさないかという意味が強くなります。

また、分類が重なることと、痛みの強さは別の情報です。Taylor(2018)の結果は、痛む領域を整理したときに複数の要素が見つかったという内容で、分類の数が多いほど重症だという順位をつけたものではありません。脚の付け根の前側と内側が気になるなら、その両方を言葉にすることが分類の考え方に沿います。最初に思いついた「内もも」という名前だけに絞らず、感じる場所の広がりを伝える方が、研究で見られた重なりを取りこぼしにくくなります。

空手の調査で見えた痛みと、経験の関係

打撃系の運動を調べた資料として、Mack(2022)の成人の空手練習者へのオンライン調査があります。回答した180人のうち、練習中の股関節の痛みを過去に経験した人は54人、30.0%でした。練習中の股関節痛を経験したことがないと答えた人は123人、68.3%です。尋ねたのはその日の症状だけではなく、空手を続けてきた間の経験なので、現在痛んでいる人の割合とは分けて受け取ります。

Mack(2022)の調査対象は紫帯以上の会員で、痛みは年齢が高い人や上級の選手で多く見られました。一方で、けがの割合には性別や練習年数による差が認められなかったという結果でした。上級であることと、練習年数が長いことは、似ていても同じ条件ではありません。経験の指標によって結果が違うため、「長く続ければ痛みに慣れる」「経験年数に比例して傷む」という単純な説明にはせず、競技の水準と年齢を含む調査として読むのが適切です。

医師の診断を受けた人については、Mack(2022)は股関節インピンジメントが12.5%、関節唇の損傷が18.8%だったと報告しています。インピンジメントは骨の形などによって関節で挟み込みが起こる問題を指し、関節唇は関節の受け皿の縁にある組織です。これらの割合の分母は調査の全回答者ではなく、医師の診断を受けた人です。階段で脚を持ち上げたときの感覚から病名を選ぶのではなく、診察と必要な画像検査で評価する領域だと位置づけます。

内転筋の運動で減ったのは、シーズン中の問題です

内転筋を鍛える運動には、鼠径部の問題を減らした比較試験があります。Harøy(2019)はセミプロの男性サッカー選手をチーム単位で無作為に分け、運動を取り入れる群と対照群を比べました。無作為に分けるとは、割り当てをくじ引きのように決め、群の違いが結果に偏って入りにくくする方法です。運動群は18チーム339人、対照群は17チーム313人で、個人ごとではなくチームで取り組む試験でした。

Harøy(2019)で用いられたのは、内転筋に負荷をかけるコペンハーゲン内転運動を中心にしたプログラムです。準備期に取り組み、シーズン中も続けたところ、鼠径部の問題がある人の平均の割合は運動群13.5%、対照群21.3%でした。推定値の不確かさを示す95%信頼区間は、運動群12.3%〜14.7%、対照群20.0%〜22.6%です。結果は選手の自己申告によるもので、シーズンを通じて感じた問題を比べています。

同じHarøy(2019)の試験で、問題の起こりやすさを表すオッズ比は0.59、95%信頼区間は0.40〜0.86でした。オッズ比は、問題が起きる見込みを起きない見込みとの比で表し、それを群の間で比べた指標です。この値は、痛みの強さが同じ割合だけ減ったという意味ではありません。練習後の痛みを直ちに軽くする効果と混同せず、継続した予防の取り組みによって、問題を抱える選手の割合が小さくなった結果として捉えます。

この試験が示す前向きな点は、内転筋の運動を普段の活動に組み込む考え方に、比較した結果があることです。Harøy(2019)の対象は、シーズンを過ごす男性サッカー選手であり、比較の中心も予防です。キックボクシングを始めたばかりで付け根が痛む人は、まず痛みの分類を踏まえて、治療として何を選ぶかを考える段階にいます。運動の名前を知ったことと、今の症状に合う運動を選び終えたことを区別すると、予防試験を役立てる位置が明確になります。

筋力の伸び、けがの予防、痛みの治療を分けて読む

内転筋が強くなることと、鼠径部のけがが減ることには距離があります。Saito(2025)のスコーピングレビューは、研究の種類や結果の広がりを整理する方法で、予防運動の19件の試験を集めました。そのうち13件でコペンハーゲン内転運動が使われ、内転筋の力は伸びた一方、けがの減少が示されたのは一部でした。著者は、その運動だけによる予防効果は限られるとして、複数の要素を組み合わせる取り組みの必要性を述べています。

ここでは、測定するものの違いが結論を左右しています。Saito(2025)の整理で、筋力の測定結果が良い方向に変化したことは、運動が狙った筋肉に働きかけた成果です。一方、けがの予防を評価するには、実際に鼠径部の問題が減ったかという別の結果を見ます。「内転筋に効く運動」という紹介を読むときには、筋力の話なのか、痛みを抱える人の割合の話なのかを区別すると、期待する効果を具体的にできます。

すでに痛みがある人の治療については、Serner(2015)が72研究を集めた系統的レビューを行いました。系統的レビューは、決めた条件に沿って研究を集め、結果や研究の質を検討する方法です。質が低い研究ほど治療の成功を大きく報告する傾向があり、研究の質と治療の成功には逆向きの関係が見られました。よく改善したという報告の印象だけでなく、どのように比べて評価したかが、治療の情報を読むときの要点になります。

Serner(2015)は、内転筋に関係する痛みには、受け身の治療より自分で動く能動的な運動が良いという中程度の根拠を示しています。これは筋肉を鍛える話を一律に退ける結果ではなく、痛みの分類に応じて運動を治療の選択肢に置く結果です。受け身の治療との比較で得られた知見と、Saito(2025)が扱った予防運動の知見では、答えようとする問いが違います。筋力、予防、治療のどの成果を目指すかをそろえて、候補となる運動を評価する必要があります。

続け方を決める前に、研究と照らす順序

キックの後の痛みに対して、まず運動の種目を増やすという順番にする必要はありません。Weir(2015)の分類を入口にすると、最初の作業は痛みがどの領域に関係するかを整理することになります。その後に、Harøy(2019)の予防の成果とSerner(2015)の治療の成果を分けて、目的に合う情報を選びます。次の確認項目は運動の回数の処方ではなく、練習を続ける方針を考える順序です。

  • 痛みの場所を先に確かめます。Weir(2015)の分類に沿い、太ももの内側、付け根の前側、関節の奥など、自分が感じる領域を伝える言葉を用意します。
  • 重なりを前提に考えます。Taylor(2018)では複数の原因が重なっていたため、気になる場所を最初に思いついた筋肉だけに限定しないようにします。
  • 運動を選ぶ目的を明確にします。Harøy(2019)は予防の比較、Serner(2015)は治療研究の整理なので、今ある痛みへの対応と今後の予防を別々に検討します。
  • 続けた後に見る成果をそろえます。Saito(2025)が示した筋力とけがの減少の違いを踏まえ、強くなった実感だけで痛みへの取り組みを評価しないようにします。

これらの確認は、痛みを押して同じキックを続けるための判定表ではありません。Mack(2022)の調査に関節の診断を受けた人が含まれたことも踏まえ、痛む動作はいったん止め、日常の階段でも支障が続く場合は医師に相談するのが一案です。相談するときには、蹴っている間か練習後か、階段でも同じ場所かを記録して伝えると、問診で経過を共有しやすくなります。

続け方を考える際の中心は、運動の名声より、何を対象にして何が改善したかです。内転筋に関係する痛みと評価された場合には、Serner(2015)の能動的な運動の知見が治療方針を考える材料になります。予防に取り組む段階では、Harøy(2019)の成果を、Saito(2025)が示した効果の広がりと合わせて読みます。痛みの領域と運動の目的を対応させることで、付け根の不調への対応を具体化していけます。

よくある質問

内ももを鍛えれば、脚の付け根の痛み全体に役立ちますか

内転筋に関係する痛みと評価された場合は、Serner(2015)が示した能動的な運動の知見が選択の材料になります。Weir(2015)の分類には腸腰筋、鼠径管、恥骨、股関節なども含まれ、Taylor(2018)では領域の重なりも見られました。付け根の痛み全体を内転筋の問題として扱わず、評価された領域に合わせて運動を選ぶことが先になります。

空手で痛む人がいたなら、初心者も同じように考えますか

Mack(2022)が尋ねたのは、紫帯以上の会員が空手を続ける間に経験した股関節痛です。年齢や上級の選手であることとの関係が見られ、現在の初心者の練習直後だけを調べた調査とは対象も時点も異なります。読む際には、打撃系でも股関節の痛みが研究の対象になっているという事実と、経験のある練習者から得られた結果という条件を合わせて押さえます。

内転筋の力が伸びれば、予防も成功したと考えてよいですか

Saito(2025)の整理では、内転筋の力が伸びた試験があっても、けがの減少を示した試験は一部でした。筋力の改善は筋力の成果として評価し、鼠径部の問題が減ったかは別に捉える必要があります。Harøy(2019)のように実際の問題の割合を比べた結果も参照すると、予防という目的に対して何を評価するのかが明確になります。

この記事の限界

対象は蹴る動作や方向転換を行う競技者が中心で、専門外来の調査と予防試験には男性に偏った集団が含まれるため、女性の初心者が行うキックボクシングに割合や効果をそのまま当てはめられません。打撃系を扱うMack(2022)は空手の自己申告調査であり、予防試験のシーズン中の結果や治療研究の質を合わせても、キックの再開時期や安全な量までは研究から決められません。股関節インピンジメントなどの判断には診察と必要な画像検査が関わり、この記事の分類表は個人の診断に代わるものではありません。持病や続く痛みがある場合は、鼠径部のどの領域を評価すべきか医師と確かめることが、練習と治療の方針を組み立てる出発点になります。

参考文献

  1. Weir ほか. Doha agreement meeting on terminology and definitions in groin pain in athletes. British journal of sports medicine. 2015;49(12):768-774.
  2. Taylor ほか. Multidisciplinary Assessment of 100 Athletes With Groin Pain Using the Doha Agreement: High Prevalence of Adductor-Related Groin Pain in Conjunction With Multiple Causes. Clinical journal of sport medicine : official journal of the Canadian Academy of Sport Medicine. 2018;28(4):364-369.
  3. Mack ほか. Hip Pain Increases With Age and Experience Level in Adult Karate Athletes: A Statewide Survey Study. Arthroscopy, sports medicine, and rehabilitation. 2022;4(2):e325-e333.
  4. Harøy ほか. The Adductor Strengthening Programme prevents groin problems among male football players: a cluster-randomised controlled trial. British journal of sports medicine. 2019;53(3):150-157.
  5. Serner ほか. Study quality on groin injury management remains low: a systematic review on treatment of groin pain in athletes. British journal of sports medicine. 2015;49(12):813.
  6. Saito ほか. A Scoping Review of Exercises for Preventing Athletic Groin Pain. Cureus. 2025;17(12):e99883.

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よくある質問

内ももを鍛えれば、脚の付け根の痛み全体に役立ちますか

内転筋に関係する痛みと評価された場合は、Serner(2015)が示した能動的な運動の知見が選択の材料になります。Weir(2015)の分類には腸腰筋、鼠径管、恥骨、股関節なども含まれ、Taylor(2018)では領域の重なりも見られました。付け根の痛み全体を内転筋の問題として扱わず、評価された領域に合わせて運動を選ぶことが先になります。

空手で痛む人がいたなら、初心者も同じように考えますか

Mack(2022)が尋ねたのは、紫帯以上の会員が空手を続ける間に経験した股関節痛です。年齢や上級の選手であることとの関係が見られ、現在の初心者の練習直後だけを調べた調査とは対象も時点も異なります。読む際には、打撃系でも股関節の痛みが研究の対象になっているという事実と、経験のある練習者から得られた結果という条件を合わせて押さえます。

内転筋の力が伸びれば、予防も成功したと考えてよいですか

Saito(2025)の整理では、内転筋の力が伸びた試験があっても、けがの減少を示した試験は一部でした。筋力の改善は筋力の成果として評価し、鼠径部の問題が減ったかは別に捉える必要があります。Harøy(2019)のように実際の問題の割合を比べた結果も参照すると、予防という目的に対して何を評価するのかが明確になります。